当院では負担の少ない体外受精を目指し体外受精も以前より新鮮胚移植を行なっております。余剰卵は追加培養後胚盤胞に至れば凍結を行い次周期以降に移植しております。
昨年からの保健適応回数制限にて事情も変わってきております。グレードの高い胚盤胞は妊娠率も高くて問題ないのですが、グレードの低い胚盤胞は妊娠率が下がり保険で制限の1回分を使うのも勿体無いと考えグレードが低ければ凍結せずに廃棄すると言う施設が複数存在しております。保険で凍結を行なった場合は胚盤胞は貯めておくことは出来ず、その次の周期は保険で採卵は行えず、前回凍結した胚盤胞移植を行なう事になっております。廃棄する施設があるのも理解は出来ます。
当院では新鮮胚移植がメインの為 胚盤胞移植は積極的には行なっておりませんが、長年の累積で1600周期程度の移植を実績し600例程度の臨床妊娠例を得ております。グレードによる妊娠率の違いも顕著でグレード高い胚盤胞では妊娠率は50%を超えますがグレードの低い胚盤胞(内細胞塊か栄養外胚葉の評価でいずれかC評価)では妊娠率は24%(43/183)になり、更に細分化して評価をすると妊娠率10%前半の胚盤胞もあります。悩ましい所はグレードの低い胚盤胞でも43例の臨床妊娠例があり多くの赤ちゃんは元気に育っています。グレードの低い胚盤胞は廃棄してグレードの高いものだけを移植すれば施設の妊娠率は高くなり保健回数上限の節約にもなります。反面廃棄したグレードの低い胚盤胞であっても移植を行えば複数の妊娠出産を確認しており、廃棄は大切な生命を奪う事にもなります。廃棄を続けてもグレードの高い胚盤胞は次周期以降に必ず得られる訳ではありません。
そこで考えたのですが、胚盤胞に至った受精卵は必ず一旦は凍結を行いその後の受診時に胚盤胞のグレードと期待妊娠率を提示し.グレードの低い胚盤胞であれば患者さんの希望で(1)保険での凍結の継続(2)廃棄(3)自費での凍結の継続から選んで頂ける様にします。自費で凍結を行った場合は次周期保険で採卵から開始出来ます。自費での凍結料金は回数制限を超えた体外受精と同様に半額とします(多くは2.5-3.5万円)。1年以上の凍結延長には別途凍結維持管理料金が必要になります。