もう一つ私の知っている遺伝子結束バンド説の話をしたいと思います。(7)で紹介した遺伝子を束ねている遺伝子の結束バンドがあると考えられております。この説は何年か前の多分コロナ前の日本産科婦人科学会の特別講演で聞いたように思います。東京工業大学の先生が講演をされましたが、誰だったか、いつだったか全然思い出せないのですが、話の内容だけは割と鮮明に覚えています。遺伝子が分裂する瞬間を顕微鏡で撮影しており、異常分裂の瞬間を世界初の映像として公開されました。解りやすく表現する為、性染色体だけで説明しましたが、卵子は長期間遺伝子の分裂しかけの状態で第一減数分裂を排卵直前に行います。遺伝子を束ねているバンドは分裂時に外れ合計23組の遺伝子が2倍の46個になります、これはほんの一瞬で起こります。この時バンドが緩んでいると例えば21番の遺伝子が一つだけ飛び出してその後、他の21番に結合して21番が3個になる21トリソミー(ダウン症)になります。この遺伝子結束バンドの緩みが40歳以上になると妊娠しにくくなったり流産率が高くなると言う学説です。このバンドは分裂前に絞める方法はありません。
以上が私の知っている二つの学説です。40歳を超えると子宮筋腫が増えたり妊娠性高血圧が増えたり周産期死亡率が7倍になります。女性の体を守る為の自然の節理なんだと思っています。特に42歳以降では全国の体外受精の統計 妊娠率・流産率(6で紹介)により出産まで至る可能性が低くなる事がご理解して頂けたなら幸いです。誠心誠意不妊治療を続けておりますが、患者さんとトラブルになる事の殆どがこの事とこれに近い話ですが、高度卵巣機能不全(早発閉経予備軍)になります。私へのクレームも何とも出来ない年齢と早発閉経予備軍がほぼ全てが、かなり以前より当院の初診42歳未満で月経開始3日目前後(早発閉経予備軍を早く知る為)とさせて頂いております。体外受精の保健適応に年齢制限があるのは公金を使用する為、合理的な判断で良い事だと思います。そう言った意味でも以前から当院では年齢制限設いた事が正当化されたと思います。決して不妊治療に自信がない訳ではありません。
その割に42歳以上の方に妊娠例があるのは一人目を当院で妊娠された方(私を信頼される)には年齢制限は行いませんし、41歳から不妊治療を開始された方も引き続き不妊治療を継続された方になります。次回は私の理念、生まれた赤ちゃん(5000人以上)は私が授けた訳では無いをお話ししようと思います。