ほぼ連続投稿になります。今回はなぜ妊娠された方に私が授けた訳ではないと言ったことも思ったこともない。”を投稿させて頂きます。不妊治療を行なっていると過分に感謝される事があります。いまだに年賀状を送って頂ける患者さんも少なくありません。私のコレクション、赤ちゃんの写真も出産1年以内(1000名以上)の方のみパネルにしておりますが、それ以外のお写真も沢山頂いております。その方々も大変感謝されておられると嬉しく思っています。ただ私は神様でも仏様でもなく、この投稿の最初の頃に話した通りの医者です。先生に授けて頂いたと言われると寧ろ心苦しく感じます。本当はそうじゃ無いんだよと言いたくなります。
婦人科の先生があの子は俺が授けてやったとい言う人もいるのは知ってますが、授かるの意味が解っていないお医者さんでしょう。そもそも人工授精の受は授けるで体外受精の受は受ける顕微授精の受は授かるです。この辺から間違えが始まったのでしょうか?あまりに烏滸(おこがま)しい話です。AIHはご主人の精子を子宮に入れる事を意味しており、ドナーからの精子を用いるAIDとの区別の為の用語です。最近ではIUI:単純に子宮に精子を入れる の表現が多くなりました。〜こんな事を投稿しようかなと思った2週間前びっくりした事がありました。(昨日 日間賀島から通院されている患者さんにも驚きました。)
私が開業当初、八事日赤より閉経後のホルモン補充をしていた患者さんの娘さんの治療を行いました。カルテは保管庫にありますが、バージョンアップしている為 今の電子カルテ上(2000-2023)では検索できません。確か排卵が難しくhMG-hCGによる排卵誘発でタイミングの後 妊娠出産はされました。ただ妊娠初期に入院が必要になる大変な卵巣過刺激症候群(OHSS)になり入院治療になってしまいました。当時、八事日赤では二子山部屋と言われる双胎妊娠 出産直前の方が集められた病室があったのですが、お相撲さんの様にお腹を膨らませた妊婦さんが廊下を行き来されておりました。その方も妊娠6週くらいで負けず劣らずのお腹になり心配でお見舞いに行った記憶があります。*卵巣過刺激症候群は日本でも死亡例があるくらい重篤な状態になる場合があります。その後もお母様は徳川町にあった当院までホルモン補充療法に通われていましたが、受診するたびに先生に授かった子がこんなに大きくなりありがとうございますと毎回感謝して頂いていたのです。初めの頃は”僕が授けた訳じゃ無いんですよ”と軽く言っていましたが、度重なる感謝に心苦しさから確かに”僕は何らかの関与はしましたが、赤ちゃんは私が授けた訳ではなく生まれてきたくて生まれたんです!”と強い口調で言ってしまいました。突然お母様は怖い顔になり私を睨みつけ”私はそうは思いません!”といい帰宅されました。その後も受診するたびに同じ感謝の話をして頂いていました。怖いので僕は頷くだけになりました。
何かの偶然か、そのお母様ご自身の体調不良で2週間前に突然当院を受診されました。当院は不妊治療専門とさせて頂いておりますが、昔からの患者さんを門前払いする様なことは無い様にしております。先月認知症の方が受診されタクシーで他の病院に連れて行ったと言う難事件もあり、またその日も受付で揉め事が起きていました。稲垣先生に診察希望と言われているのですが、どうしましょう?かなりのご年配の方です。お断りしてもいいですか?とスタッフから相談を受け名前を聞いてもらいました。何とそのお母様でした。
昔のことが蘇り、涙を抑える事が出来なくなり恥ずかしい診察になってしまいました。今回もお嬢様とお孫様の写真を見せてもらい同じ感謝の言葉の後ご帰宅されました。
そんな事がきっかけで、他の方から同じ事を言われても頷くだけにして心の中では違うよと言ってます。
私の考えは人工授精も体外受精も顕微授精も同じです。確かに僕は何らかの関与はしましたが、赤ちゃんはやはり生まれてくて生まれたのだと思います。
*クロミッド刺激の体外受精では入院が必要になる卵巣過刺激症候群は今の所1例もありません。hMG使用例は2例あります。