クロミッド体外受精の説明の前にまずホルモンとホルモン剤の説明が必要であると思います。前回クロミッドの薬理作用を説明しましたが、クロミッドは抗女性ホルモン製剤で作用機序は特定できていないが、結果的には間接的にの下垂体を刺激してFSH,LH(LHパルスを含む)を上昇させ卵胞を育てる説明をしました。主として重要なホルモンは脳下垂体からでる、FSH(卵胞刺激ホルモン)LH(黄体化ホルモン)卵巣から出るホルモン(二つの女性ホルモン)として卵胞ホルモン(E2)と黄体ホルモン(P4)の4つとちょっと難しい視床下部性ホルモン(GnRH)と合計5つで十分でしょう。詳しい説明のスライドは以前のホームページにて紹介していましたが、ホームページの作成会社と上手くコミニケーションが取れればユーチューブの方に動画としてアップしたいと半年前から考えています。他にも多嚢胞性卵巣と関与の深い副腎ホルモン(ステロイドホルモン)、射乳ホルモン(プロラクチン)甲状腺ホルモンの様に高くても低くてもよろしく無いホルモンや多種のホルモンを抑制するホルモンもありますが、前途の5つのホルモンを知るだけで十分理解できるはずです。
ではこれだけ知っていれば、ほぼ十分の5つのホルモンの紹介です。
1.視床下部性ホルモン(GnRH)は脳の中枢から大変微量に出るホルモンで脳下垂体を刺激します。1970年台にアメリカの学者が豚の脳160,000匹から僅か0.25gの視床下部性ホルモンを抽出しました。これによりノーベル賞を授与されております。(これをさらに刺激しているホルモンもあるかも知れません。)とにかく量が少ない為、他のホルモンのように採血して簡単に知ることは出来ません。LHの上昇が顕著な為LH-RHとも言われています。しかし分子構造は解読できているので同じ製剤やこれに近い構造の類似品(GnRHa)=ご存知スプレキュアー・ブレレキュアー・リュープリン等は簡単に購入し使用できます。このホルモンの分泌不全が視床下部性排卵障害でありストレス・引越し・転職・過度のダイエットが原因になる事が多いです。
(患者さんの中で脳下垂体性排卵障害と指摘された方も見えるかも知れませんが、脳下垂体性の排卵障害は3種類のみ知られており医師国家試験ではよく出ますが、実際ほとんどお見かけせず、その中でも1番多いとされるシーハン症候群ですら私は経験していないので大抵は視床下部性排卵障害の誤認識か中枢性排卵障害のつもりでついそう言ってしまったかだと思います。)
当院で使用しているGnRHaはブレキュアーになります。GnRH類似品なので投与すれば直ぐにLHが多量に分泌されます。つまりLHサージを人工的に起こすことが出来ます。逆に続けて使うと類似品のためその後のLHパルスを止める様になりロングプロトコールやショートプロトコールので頻繁+長期に使われております。また短期投与で有効なGnRH拮抗薬(抑える薬)も開発されました。最近では黄体ホルモンの初期投与でもLHパルスが止められる事が知られ全卵凍結前提の体外受精プロトコールにもなっています。
今回の話は難解であったと思います。図解を加えればもう少しそして動画なら少なくとも分かった様な気がするくらいになるとは思いますが、いつかは動画で説明したいとは考えています。
次回は脳下垂体性ホルモン FSHとLHの解説をします。これから説明のホルモンは、簡単に計測でき当院でも頑張れば40分程度で計測が可能で且つ理解もし易いとは思いますが、読み飛ばして今後紹介する当院のクロミッド刺激体外受精で理解しにくい場合に読み返して貰っても十分かも知れません。
プロトコールとは決まった薬剤投与方法で卵巣を刺激する事を言いますが、当院のクロミッド刺激は経過を見て薬剤の投与減量や中止あるいは2段階投与を行うのでプロトコールではなくシステムになります。
余談 普段は標準語で話しているつもりですが、仲間同士では当然名古屋弁を使用しています。名古屋弁には作られた類似品の名古屋弁と標準名古屋弁があります。例えば標準語で”どちらがいいですか?”を作られた名古屋弁なら”どっちぎゃえーの?”ですが、我々標準的名古屋弁なら”どっちぃぃ?”になります。