今回はいわゆる女性ホルモン=卵胞ホルモンと黄体ホルモンの解説をします。このホルモンは脳下垂体ホルモン(FSH&LH)刺激を卵巣が受けて発育してきた卵胞から分泌されます。
卵胞ホルモンの正式名エストロゲンです。これは女性らしさの本質的ホルモンでお肌の潤い、乳腺の発達数えきれない作用があります。女性の第2次性徴発現の本質的なものです。これの原料はコレステロールなので過度なダイエットは控えましょう。エストロゲンには3種類あり排卵周期で覚えるのはエストラジオール(E2)卵巣由来だけです。他にエストロン(E1)副腎由来、エストリオール(E3)胎盤由来のホルモンがありますが、月経周期に関係しないので覚える必要はありません。
さてこのエストラジオール(E2)ですが、FSHとLHの刺激により卵胞の内側の細胞(顆粒膜細胞)より分泌が上昇します。妊娠に関与する作用としては子宮内膜増殖、子宮頚管粘液の増加や牽引性の良化、子宮や外陰部の血流を増加=排卵に向けたすべての準備をしてくれます。卵胞が大きく顆粒膜細胞を増殖させながら卵胞ホルモンが上昇します。排卵に向けて月経中では20-90pg(ピコグラム)/dLのホルモンは300-500程度まで上昇します。これの刺激は主にLHパルスなのですが、E2がピークに達した時LHもピークを迎え2-15だったLHは100くらいに増加し排卵を促進します。これをLHサージと言います。クロミッド周期では多いとE2のピークは2000くらいまで増加する場合もあり、hMG周期では2000以上になる事がむしろ普通です。自然周期においてはLHサージの後、約16時間後に排卵します。クロミッド周期やhMG周期でサージを待つと卵子はやや過熟気味になるため卵胞ホルモンが十分な時点で排卵を人工的なLHサージで起こさせます。その場合は人工的サージ(hCG投与や点鼻薬投与後、多くは40時間後(34〜42時間)で排卵します。排卵直前よりE2は低下を始め人によっては中間期出血を起こします。
自然周期やクロミッド周期ではLHパルスとLHサージが主役ですが、FSHも顆粒膜細胞を刺激する必ず必要なホルモンです。自然周期では月経直前と排卵直前に少し増加します。同じ顆粒膜細胞は卵子周囲にも付いており、それは卵丘細胞と呼ばれております。ここからLHの刺激で何らかの卵子成熟ホルモンが分泌され卵子そのものを成熟させます。以前のページに記載しております。顆粒膜細胞の更に後ろに莢膜細胞がありFSHと共に顆粒膜細胞の手助けをしております。
黄体ホルモン(P4)は排卵後の卵胞が本当に黄色くなり黄体と呼ばれる組織に変わりそこから分泌されます。妊娠に関しての作用としては子宮内膜を増殖期から分泌期に移行させる。基礎体温を高温相にさせる。卵胞ホルモンと協力して乳腺を発達させる(月経前に胸が張るのは月経の前兆ではなく黄体ホルモンの持続によるもので妊娠に至ればもっと胸が張ってきます。)子宮の収縮を抑える。高温相性中期(着床期)に6-15ナノグラム/mlですが、それ以外ではほぼ0.1-0.6程度 排卵直前や無排卵周期で0.8-1.5 高温相一日目で2程度その後急増し妊娠初期には15-50まで上昇します。クロミッド周期では着床期に50を超えることは珍しくないのですが、天然型の黄体ホルモン腟錠では10-15程度とあまり高くはなりません。当院の体外受精は基本クロミッド周期なので黄体ホルモンはかなり高い値で推移しますが、6以上あれば着床には影響ないとされているので、これを自慢したことはありません。ただ数回hCGを打つだけなのであまり高くなっていないと思っている患者さんは多いです。高温相が10日以上あり着床期に黄体ホルモンが6以上あれば黄体機能不全ではないとされております。黄体からもE2は継続的に分泌され妊娠に至らなければ白体となり両者のホルモンは急低下して月経が始まります。ホルモンに満たされた時期が過ぎ落ち着きを失いがちな時期で症状の強い方を月経前緊張症と診断します。ここのところ専門的すぎて詰まらない話ばかりですいません。次回から私の得意とするクロミッド刺激の体外受精の話をしたいと思います。
ここからは生殖医療を行いたいと考えている産婦人科の先生に問題です。ある時、挙児希望35歳の女性に採血をしました。今はどんな状態でしょうか?私は嘘をついても、ホルモンは嘘をつきませんよ。
①FSH 7 LH 5 E2 40 P4 0.3 ②FSH 35 LH 15 E2 8 P4 0.3 ③FSH 5 LH 12 E2 50 P4 0.3 ④ FSH 1.2 LH 1.0 E2 250 P4 22 ⑤ FSH 1.8 LH 0.8 E2 5.5 P4 0.2 ⑥ FSH 8 LH 25 E2 350 P4 0.9 ⑦ FSH 9 LH 5 E2 50 P4 1.5 ⑧FSH 2.2 LH 2.0 E2 100 P4 3.2 正解は次回投稿します。